メタボローム技術による結核菌の新しいTCA回路の探索と
  疾患制御ポイントの解明


    Tian, J., Bryk, R., Itoh, M., Suematsu M., Nathan, C.
    Variant tricarboxylic acid cycle in Mycobacterium tuberculosis:
    Identification of a-ketoglutarate decarboxylase.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 10670-10675, 2005.

 細菌には独特のTCA回路があり、細胞内寄生体である結核菌は増殖期に山手線に相当する 回路の上半分を使って有機酸の代謝を行っていると長い間理解されてきた。Cornell大学医 学部の微生物学教室Carl Nathan教授は結核菌のTCA回路に属する酵素のgenomic annotation に着目し、「遺伝子の名前」に一致した代謝の実体があるかどうかを我々の研究室のメタボ ローム解析技術を用いて分析できないかを依頼され、共同研究がスタートした。分析の結果、 結核菌は増殖期にグルタミン酸やSuccinateなどの合成を爆発的に増加させることが判明し、 TCA回路の上半分の代謝のやりくりでは説明が付かないことが明らかになった。 さらなる分析の結果、genomic annotationでa-ketoglutarate dehydrogenase(KDH)と考えられていた酵素は実は基質であるa-ketoglutarateの脱炭酸 反応でsuccinic semialdehydeを生成する酵素であることが明らかになった。この酵素はヒトには存在せず、 大腸菌のKDHとも大きく構造が異なるため、結核菌固有のエネルギー代謝制御ポイントとなる可能性があり、創薬標的分子としても期待される。

結核菌Figure