肝臓はヘムを解毒して生成されるCOにより低圧灌流系としての血流を
  維持する臓器である:COによる循環機能制御機構の世界初の報告


    Suematsu M., Goda, N., Sano. T., Kashiwagi, S., Egawa, T., Shinoda, Y.,
    Ishimura, Y. Carbon monoxide : An endogenous modulator of sinusoidal
    tone in the perfused rat liver. J. Clin. Invest. 96, 2431-2437, 1995.
   

 肝臓は主な血流を腸管の静脈系にあたる門脈から供給されており、血管の入口部にあたる門脈終末枝とドレナージ血管である中心細静脈の間にはわずか数cmH2Oの圧較差しか存在しないにもかかわらず豊富な血流を維持している。換言すればこの臓器には血管抵抗を低く維持するようなしくみが存在することになる。そのような肝臓血管系の弛緩因子として当初NOが注目されたが、多くの実験はそれを否定する見解を提示していた。肝臓で定常状態で生成されているCOは、HOの拮抗阻害剤である亜鉛プロトポルフィリン-IX(ZnPP)を投与すると生成が阻害される。この状態でのかん流肝は約30〜40%の血管抵抗の増加を示すようになる。ここに1μM程度のCOあるいは膜透過性のサイクリックGMPアナログである8-プロモサイクリックGMPを投与すると灌流圧の上昇は抑制された。これらの成績から、内因性に生成されるCOが、定常状態における肝血管抵抗の調節因子であることが示唆された。肝微小循環の生体顕微鏡学的解析法により、CO生成低下時の血管収縮は小葉内の類洞血管に起きており、肝臓特異的な血管周皮細胞である伊東細胞の局在に一致した。また初代培養した伊東細胞は培養液に添加したμMレベルのCOによりサイクリックGMPの増加を認めた。一方α1アルゴニストであるフェニレフリン投与では終末門脈枝レベルの収縮により全肝血管抵抗が上昇するものの、ZnPP投与により認められたような類洞収縮反応は認められなかった。この報告は内因性に生成されるCOがどの程度の量なのかを定量的に解析してその脈管作動性を報告した世界で初めての報告である。


    図1 マウス肝臓微小循環の全体像(透過型生体ビデオ顕微鏡像)。
            多数の小葉構造から構成されている。
     liver_microcirc.jpg


    図2 ラット肝臓微小循環における類洞の構造(透過型生体ビデオ顕微鏡像)類洞内に
            突出している細胞がKupffer cell, 類洞の外側に脂肪滴を有する細胞が伊東細胞である。
     sinusoid.jpg