HO-1は常在性マクロファージに、HO-2は肝実質細胞に: 
  CO生成のコンパートメントと作用点の解明


   Goda, N., Suzuki, K., Naito, M., Takeoka, S., Tsuchida, E., Ishimura, Y., Tamatani, T.,
    Suematsu, M. Distribution of heme oxygenase isoforms in rat liver:
    Topographic basis for carbon monoxide-mediated microvascular relaxation.
    J. Clin. Invest. 101, 604-612, 1998.
    

  COが肝臓の類洞血流を維持するために必須のガスであることが1994年、95年の我々の研究で最初に報告されて以来、当時広く研究されていたNOの領域の研究者らはheme oxygenaseの阻害剤として用いられているZnPPの「副作用」が実験結果にもたらす影響について指摘していた。局所濃度データの提示、阻害剤の効果、生成部位と作用点の同定というmediatorの4条件を満たしたデータの提示は必ずしもNOの領域でもしっかり提示されていない現状はあったものの、当時COの研究者はほとんどいなかったこともあり、非常に厳しい指摘を受けた。
  そこで、筆者らはHOを抑制せずに、肝臓内局所のCOを捕捉するものがZnPPで見られたような血管収縮作用を発揮するであろうと考え、NO,COをともに捕捉するヘモグロビンと、NOは捕捉できるがCOとの結合が起こらないメトヘモグロビン投与による血管反応の変化を検討することにより仮説の検証を試みた40)。正常の灌流肝ではヘモグロビンを投与すると、ZnPPで見られたような類洞収縮反応が起こる。一方、メトヘモグロビンではこの変化は起こらなかった。またヘモグロビンを類洞内皮細胞の篩板状小孔を通過できない250nm程度のリポソームに封入し投与すると、血管抵抗の増加や類洞収縮が起こらなくなった。以上の成績からディッセ腔のような類洞外空間におけるCOが維持されることが肝血管抵抗を低く保つために必要不可欠であることが明らかになった。in vivoで肝臓に運ばれるヘムのうち遊離ヘモグロビンとしてハプトグロビンなどの血清タンパク質に結合しているものは細胞外空間で速やかに酸化され、メト型になり肝細胞に取り込まれる。他臓器ではNO捕捉性のヘムタンパク質は血管内コンパートメントに存在するため、血管内皮細胞依存症の弛緩反応を阻害しないが、肝臓の類洞周辺では篩板状小孔が存在するため容易にディッセ腔に拡散する。このような流血中のヘムタンパク質を回収し、そのヘムを分解する臓器である肝臓が、COを利用した類洞血流維持を行うことには重要な生理学的妥当性があると思われる。
  またこの研究はHO-1, HO-2という二つのisozymeの単クローン抗体により世界で初めて2つの酵素の臓器内局在を明らかにしたこと、また人工酸素運搬体を開発する上で、ヘモグロビンの血管外逸脱がどのような臓器機能障害をもたらすかを考える上で極めて重要な報告としてこれまでに多数引用されている。


    図1:走査型電子顕微鏡によるラット類洞血管内皮細胞のfenestration
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    図2:ラット肝臓におけるHO-1, HO-2の発現分布(Goda, et al. 1998 J Clin Investより)
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